第2章の2 家を建てるときの流れ

・詳細図面の作成
 建物を建てるためには、建築確認申請程度の図面では細かな部分が決められていませんので、さらに建物の詳細な内容が分かるような図面を作成します。昔は大工さんが描いた間取り図だけで家をつくっていましたが、それはいつも同じ構造材で、仕上げの種類も一つか二つで済んでいた時代の話であって、現代のさまざまな仕上げ材や仕様が市場に存在している以上、どの材料をどの部分にどのように使うのかを図面にして、関係者が分かるようにしなければ、住宅といえども建物をつくることはできません。

 また先のような概算的な見積でなく、詳細の部材の数量などを把握できる正確な見積を作るためには、このような詳しい図面が必要になります。

・見積  詳細な図面ができあがってから施工業者で見積をします。建築設計事務所に設計を依頼した場合は、複数の施工会社に見積を出すのか、それとも一社だけにするのかなどを建築士と相談してください。

 工務店やハウスメーカーに設計から依頼した場合は当然ですが、すでに設計の段階から施工する会社が決まっているため一社でしか見積を行ないません。

 施工業者から提出された見積を建築設計事務所がチェックします。数量の計算間違いや、図面の読み違いで誤って見積もりされた部分がないかを確認します。

 数社に見積を出した時には、どこか一社に決めなければいけません。ここで単純に一番安い施工業者にするのか、技量や信頼性なども含めて建築士と相談して他の業者に決めるのかは最終的には建築主の判断になります。






 建築設計事務所に設計監理の依頼をしていない場合は、この見積のチェックは建築主自身が行います。  先に取り上げたように建築確認申請程度の簡単な図面だけで行った見積では、数量も正確に算出することができませんし、細かなそれぞれの部材の価格を知ることは困難です。

 それと同時にそれぞれの細かな価格を知ることができませんので、予算をオーバーして調整をしなければいけない時や、実際に建築工事が始まってから変更になった部分の計算などを行うことは非常に困難になります。詳細な図面で見積を行ってはじめて、その建物で使われる部材の数量やそれぞれの価格を知ることができます。

 建築設計事務所でも数量の算出はできますが、それぞれの価格や手間賃は施工業者によって異なりますので、その部分については施工業者から提出された見積を検討することになります。

・契約
 設計監理と施工を別々にした場合は、ここで施工業者と建築主が建築請負契約を締結します。

 建築設計事務所が現場監理を行う場合は、この契約に立ち会いお互いの立場と義務、権利の確認をおこないます。

 建物を建てることは、作られた商品を買ってくるのとは異なり、多くの人が建築主の周りでそれぞれに応じた役割を果たして始めて完成できるものです。ですからうまくいかない時には他人の迷惑になったり、行き違いで二度手間になったりすることもあります。そのようなことができるだけ無いように、それぞれがそれぞれの立場を明確にしておくことが大切なのです。

・着工、現場監理
 工事が始まると現場には施工会社からその現場を責任を持って担当する現場監督が派遣されます。現場監督は普通の大きさの住宅でしたら、複数掛け持ちをしていることが多いようです。

 現場監督の仕事は、監督自身が金槌やのこぎりを持って作業をするわけではなく、作業をする人を段取りしたり、工程を管理したり、建築設計事務所と打ち合わせをするのが主な業務になります。ですから一日中現場にいるわけではないので、複数の現場を掛け持ちできるのです。


 建築設計事務所が行う現場監理は、現場監督の管理とは異なり、主として図面通り現場ができているかを確認したり、建築主との打ち合わせた内容を現場へ指示することなどになります。

 建築設計事務所に監理業務を依頼していない場合には、施工業者の監理担当者やハウスメーカーの監理担当者が行うことになるはずです。建て売り住宅の場合にも、建築確認通知書には工事監理者の氏名が記載されていますが、実際に第三者による現場監理がどの程度行われているかは疑問の残るところです。設計監理を建築主自身が建築設計事務所と契約している場合は、この人が現場監理を行うということが明確にわかりますが、ハウスメーカーや工務店の設計施工で家をつくった場合には、建築主が直接現場監理者を選ぶことができない仕組みになっています。

・竣工検査、引き渡し
 一般的には建物が完成して建築主に引き渡しされる前に、建築主の検査が行われます。その中で支障がある部分については手直し工事がおこなわれます。現場監理者は建築主の検査が行われる前にあらかじめ独自に検査を行い、早い段階で手直しを施工業者に指示します。

 建物が完成した時点で、役所の建築確認申請による完了検査を受けます。住宅金融公庫の融資(現在ではフラット35の利用)を受ける場合は、この完了検査を持って残金の融資が公庫から指定の銀行へと振り込まれます。

 全てが完了して鍵や竣工図面、各種設備機器の取扱説明書、アフターサービスのしおりなどと共に建物が建築主へ引き渡しされます。

 以上が家を建てる際の相談から引き渡しまでの大まかな流れです。それぞれの場面で様々な決定や契約、申請、検査などが行われます。

 特に注意が必要な「見積」「契約」「監理」などを重点的にこの本では取り上げています。